手術を知る

前立腺肥大症の
手術を知る

手術による治療が必要な場合は?

薬での治療効果が不十分な場合や、尿閉(尿が出ない)・血尿・膀胱結石・尿路感染症などの合併症*1がある、またはその恐れがある場合は手術が検討されます。主治医とよく相談し、理解・納得の上で治療を受けましょう。

*1「合併症」とは、ある病気が原因となって起こる別の病気、または手術や検査などの後、それらがもとになって起こることがある病気をいいます。 

内視鏡による手術が主流です

今日、前立腺肥大症に対する主な手術の方法は、肥大しすぎた前立腺組織を切除や蒸散により取り除く方法です。多くの場合は開腹せず、尿道から内視鏡を入れて電気メスやレーザーで治療を行う低侵襲な手術が一般的です。

ここでは、保険適用され、前立腺肥大症手術の主流となっている内視鏡による手術方法を紹介します。手術方法の選択は、前立腺肥大症の特性、患者さんの状態、医療施設の設備、術者の習熟度を考慮して選択されます。内視鏡による手術の治療効果はいずれも長期にわたり維持され、また、開腹手術に比べて体への負担が少ないといわれています。

イメージ:TURP

経尿道的前立腺切除術 (TURP : ティーユーアールピー=transurethral resection of the prostate)

●モノポーラTURP

古くから行われており、現在も広く実施されている手術方法の一つで、先端にループ状の電気メスを付けた内視鏡を尿道から入れて高周波の電流を流し、肥大した前立腺を少しずつ削るように切り取っていきます。 他の内視鏡による手術に比べると、手術中の出血やそれに伴う輸血が必要になる頻度が高いこと、灌流液によるTUR症候群(低ナトリウム血症)が起きるリスクが高いとされています。また、術後の主な合併症としては尿閉、射精障害などがあります。

  • 手術の所要時間
    前立腺の大きさにもよりますが、1時間程度。麻酔は下半身麻酔または全身麻酔となります。 
  • 入院期間
    5-8日程度(患者さんの状態や医療機関によって異なります) 

 

●バイポーラTURP

モノポーラTURPと同様、電気メスを使用する手術ですが、違いは手術時の灌流液に生理食塩水を使用することです。モノポーラTURPと比べると、治療効果は同等ですが、TUR症候群(低ナトリウム血症)はなく、手術中の出血とそれに伴う輸血の頻度が低い、また、術後の尿閉などの合併症も少ないとされています。

  • 手術の所要時間
    前立腺の大きさにもよりますが、1時間程度。麻酔は下半身麻酔または全身麻酔となります。
  • 入院期間
    4-8日程度(患者さんの状態や医療機関によって異なります)

ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP: ホーレップ= holmium laser enucleation of the prostate)

内視鏡の先端からホルミウムレーザーを照射し、肥大した前立腺を被膜から剥離して核出(くり抜くように切除)する手術です。ホルミウムレーザーは、そのレーザー特性から衝撃波を発生させることで前立腺組織の剥離が可能です。

くり抜いた前立腺はモーセレーターという機器で粉砕した後、吸引して体外に排出します。残存する前立腺組織が少なく、再発の可能性が少ないとされています。

TURPと比較すると、治療効果は同等である一方で、出血は少なく、入院期間と関係する尿道カテーテル*2の留置期間も短いとされています。但し、術後の尿閉や尿失禁などの合併症はTURPと同等の頻度で発生するとされています。

  • 手術の所要時間
    前立腺の大きさにもよりますが、ややTURPより長く、1時間から2時間程度。麻酔は下半身麻酔または全身麻酔となります。
  • 入院期間
    4-7日程度(患者さんの状態や医療機関によって異なります)


*2「尿道カテーテル」は、手術した箇所を保護するため、尿道に留置されます。 

 

HoLEP

532nmレーザー光選択的前立腺蒸散術 (PVP:ピーブイピー= photoselective vaporization of the prostate )

内視鏡の先端からグリーンレーザーを照射し、肥大した前立腺組織を蒸散する手術です。532nmの波長をもつグリーンレーザーは、その特性から前立腺組織の赤血球中に含まれるヘモグロビンに選択的に吸収されるため、効率的に前立腺組織を蒸散することが可能です。

入院期間と関係する尿道カテーテルの留置期間はHoLEPよりさらに短く、多くの場合24時間以内とされ自然排尿への回復が早いため、他の内視鏡手術と比較しても早期に通常の生活に戻ることができます。また、術中の出血が少ないことから、抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)を服用中の方でも安全に手術を受けられます。内視鏡による手術の中でも比較的体への負担が少ない手術方法です。

  • 手術の所要時間
    前立腺の大きさにもよりますが、1時間程度。麻酔は下半身麻酔または全身麻酔となります。
  • 入院期間
    3-4日程度(患者さんの状態や医療機関によって異なります) 
WAVE

経尿道的水蒸気治療(WAVE: ウェーブ=Water Vapor Energy Therapy)

内視鏡の先端に取り付けた器具から水蒸気を発生させ、肥大した組織の細胞を壊死させることで前立腺肥大症を治療する術療法です。

壊死した細胞は1~3ヵ月かけて自然に体内に吸収され、肥大した前立腺が小さくなって尿道が広がり、排尿に関わる症状が改善されます。 

手術時の出血がほとんどなく、局所麻酔でも行うことができ、手術に要する時間・入院期間ともに短くなっています。

身体への負担が比較的少ないことから、合併症のリスクが高い患者さん、また高齢であることや認知機能障害など、術後の身体機能低下リスクが高く、従来の手術が困難な患者さんに、この手術が検討されます。

  • 手術の所要時間
    前立腺の大きさにもよりますが、10分程度。麻酔は下半身麻酔または全身麻酔となります。
  • 入院期間
    0-2日程度(患者さんの状態や医療機関によって異なります)
イメージ:みかんで例えると

 

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