専門医からのメッセージ Vol.6
体への負担が少ない、手術の選択肢 — 経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)
日本大学医学部泌尿器科学系 泌尿器科主任教授
日本大学医学部附属板橋病院 病院長
髙橋 悟 先生
日本大学医学部附属板橋病院 病院長
髙橋 悟 先生
薬と手術の間を埋める治療法 — 経尿道的水蒸気治療(WAVE治療:Water Vapor Energy Therapy)
薬物療療と手術療法の間には以前からギャップがありました。今では、手術による患者さんの体への負担度合いはだいぶ低くなってきていますが、どうしても手術には麻酔や出血など、体に対して侵襲性があります。がんの場合なら、患者さんも納得して手術を受ける気になってくれますが、前立腺肥大症は良性疾患ですから、手術をためらわれる患者さんが多いのが現状です。
今は超高齢社会であり、80歳、90歳で手術を検討される方が当たり前にいらっしゃる時代です。でも、高血圧、糖尿病、狭心症などの心臓病、慢性腎疾患や脳血管障害などの既往症があると、私たち医療者側でも患者さんの体にかかってしまう負担について、正直なところ不安を感じることがあります。薬による治療から手術へと向かうハードルが高いのです。
このギャップを埋める治療法が、米国で開発され日本では2022年9月に保険収載となった経尿道的水蒸気治療(以下、WAVE治療)です。アンメットメディカルニーズ(いまだ満たされていない医療ニーズ)を満たす治療と位置づけられると思います。
患者さんへのメッセージ — WAVE治療を選択肢に
前立腺肥大症は良性疾患なので命に関わるものではありませんが、外出時にトイレの場所を確認しないと安心できないとか、気持ちが塞ぎ込んでしまうなど、生活の質に大きく関わってくる病気です。
WAVE治療の登場により、アンメットメディカルニーズが埋まってハードルが下がり、持病があって手術ができなかった方や、高齢の患者さんにも治療を受けていただけるようになったことは、本当に喜ばしいことです。充実した人生を送っていただくため、まさに超高齢社会が待ち望んでいた治療なのではないでしょうか。
ぜひ主治医の先生とよく相談されて、この新しい治療法を選択肢に加えていただきたいと思います。
髙橋 悟 先生 略歴
1985年、群馬大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、国家公務員共済連合会虎の門病院、東京都立駒込病院を経て、1993年より米国メイヨークリニック泌尿器科リサーチフェロー。1998年、東京大学医学部講師、2003年、助教授。2005年、日本大学医学部泌尿器科学講座教授に就任。2009年より主任教授。2021年より同大学医学部附属板橋病院病院長。日本泌尿器科学会専門医・指導医。医学博士。