「HoLEP」の歴史とその特性について
1990年代の終わり頃、ホルミウムレーザーという種類のレーザーを使って、前立腺を剥がす、という方法が登場しました。この方法はニュージーランドのギリング先生によって発表されましたが、もともとは日本の平岡保紀先生が剥離子という機械を使って行っていた手術にインスパイア(影響を受けた)されたものだ、といっておられます。
そのようなバックグラウンドもあって日本でも2000年頃から始まり、少し前のデータになりますが、手術のシェアでは30%以上と国内ではメジャーな術式となっています。
ホルミウムレーザーは水に吸収される特性があり、術野に水を満たしながら行う前立腺肥大症手術ではレーザーを当てる距離で出力調整ができ、万一間違った場所に当ててしまっても、そのエネルギーはすぐに水に吸収されるため、他の臓器を痛めることがありません。
さらにレーザーを近づけて当てれば非常に強い止血効果が得られ、比較的出血の少ない手術を行うことが可能です。この手術を行う医師の立場からは、「HoLEP」は使いやすく安全であるといえますが、熟練を要する手術、ともいわれており、ラーニングカーブ(術者の成長曲線)は比較的長いとされています。
患者さんが医療機関を選択される場合は、症例数が一つの目安になるかと思います。
手術を検討されている患者さんへのメッセージ
「主治医の話に納得できるかどうかがポイント」
「HoLEP」は、
・巨大な前立腺肥大がある
・がんの疑いがある
・比較的若い方(再発が少ないので長期間で再手術する確率が少ないため)
といった患者さんには、この手術が適しているといえるでしょう。しかし、前述したように射精機能が失われることが多いので、この点は考慮が必要です。
これまでたくさんの「HoLEP」による手術を経験していますが、特にリスクの高い巨大な肥大症や抗凝固剤が中止できないような重篤な心臓の合併症をお持ちの高齢の患者さんを安全に手術できた時には、自分自身この治療を行ってきたことに対し誇りを感じます。
これまで多数の新しい低侵襲手術が導入されてきましたが、実際に残るものは少なく、よいもの以外は淘汰されていくと感じています。その中でHoLEPは標準治療の一角を占めるようになっており、安心しておすすめできるといえます。私の行っている「anteroposterior dissection(順行性剥離)HoLEP」も定型的な術式の一つとなっておりますが、さらなる合併症低下に向け研鑽を続けております。
患者さんやご家族がこの手術を検討される際の病院・医師の選択ですが、ある程度症例数が多い医療機関ということは重要なポイントです。そして担当の医師と話をして、説明に納得できる先生にお任せするのがよいと思います。
遠藤 文康先生略歴
筑波大学医学部卒業。筑波大学病院研修医。2000~2002年、DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてドイツ・ギーセン大学(Justus-Liebig Univ. )留学。筑波メディカルセンター病院泌尿器科、筑波学園病院泌尿器科を経て、2006年より現職。