大きくなった前立腺が尿道を圧迫して
おしっこが出にくい、などの症状がある病気
前立腺肥大症とは、「男性の膀胱の出口にある前立腺の良性の過形成(肥大)による下部尿路機能障害を呈する疾患」と定義されています。「前立腺の腫大」と「膀胱出口部の閉塞」の2つが原因となる疾患で、がんではありません。下部尿路とは、膀胱から尿道までを指します。もう少し噛み砕いていいますと、「大きくなった前立腺が尿道を圧迫して、おしっこが出にくい、などの症状がある病気」ということになります。
40歳以上の中高年男性にみられ、加齢とともに増加します。すなわち、「加齢」が一番のリスクファクター(危険因子) なのです。その他のリスクファクターは、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症、メタボリック症候群、性機能障害などで、さらには遺伝的要因もあります。父親に前立腺肥大症の手術既往があると3.5倍、兄弟に前立腺肥大症の手術既往があると6.1倍、一卵性双生児は二卵性双生児の3倍というデータもあり、遺伝的影響が推測されていますが、具体的な原因遺伝子はわかっていません。
患者さんへのメッセージ
「トシのせい」にせず、まずは受診してください
このサイトなど、まずは情報を集めて、前立腺肥大症の一般的な症状を理解することが大切だと思います。症状のある方は、これらを参考に前立腺肥大症をご自身で疑い、受診のきっかけにしていただきたいですね。
すでに受診されている方も、もし今のお薬で満足していない、変えてみたいと感じたら、遠慮なく主治医に伝えてください。年齢を重ねることは、前立腺肥大症にとって確かにリスクファクター(危険因子)ではありますが、治療は飛躍的に進歩しています。治療をすることでよくなるケースが多いのです。人生を楽しむためにも「トシのせい」で片づけないでいただきたいと思います。
奥野 博先生略歴
愛媛大学医学部医学科卒業。京都大学医学部泌尿器科講師、国立京都病院泌尿器科医長を経て、
2004年より国立病院機構京都医療センタ-泌尿器科科長、2010年には同診療部長に就任。
京都大学および関西医科大学臨床教授。日本泌尿器科学会専門医、京都大学医学博士。